心理療法について

当院では、まず最初にどのような悩み、困り感があるのかについて傾聴させていただきます。カウンセリングの主役は相談者の皆さまご自身です。お悩みを聴き、今抱えていらっしゃる問題に対する整理とあり方、考え方、アドバイスなどをカウンセラーからお伝えし、実際に困り感の改善に役立てられそうか、どのような見通しを持ち、何ができるかを一緒に考えていきます。その際、傾聴と支持的カウンセリングのみで相談が終わる場合もありますし、心理療法と呼ばれる技法を使い、積極的な治療アプローチを使って、現状の困難をひきおこしているであろう部分に変容を促す方法もあります。当院で実施できる心理療法は以下のものとなります。

認知行動療法
認知行動療法(CBT)は、思考、感情、行動の相互関係に焦点を当てています。この療法は、特定の問題や症状に対処するために、個人の思考パターンを認識し、その思考パターンが感情や行動に与える影響を客観的に捉え、思考パターンに変容を加えることで、問題となりやすい感情や行動も変えていく心理療法です。

<主な特徴>
認知の再構成: 患者は自分の否定的な思考を特定し、それをより現実的でポジティブなものに変える方法を学びます。
行動の変化: 患者は、特定の行動を変えるための具体的な戦略を学び、実践します。これにより、感情や思考にも良い影響を与えることが期待されます。
問題解決スキル: 認知行動療法では、問題解決のためのスキルを身につけることも重視されます。これにより、患者は日常生活の中で直面する困難に対処しやすくなります。
時間制限: 認知行動療法は通常、短期間で行われることが多く、数回から数十回のセッションで完結することが一般的です。

<適応症>
うつ病、不安障害、強迫性障害、PTSD、摂食障害など、さまざまな精神的健康問題に対して効果があるとされています。

※認知行動療法は、思考と感情/行動の関係を理解し、改善することで、心理的な問題を解決するための実践的なアプローチです。専門のカウンセラーとの共同作業が一般的ですが、自己学習やワークブックを用いた自己治療も可能です。

メタ認知療法
メタ認知療法は、思考の仕方やその影響を見直すことで、より健康的な思考パターンを形成することを目指す心理療法です。

<メタ認知療法の基本概念>
メタ認知:自分の思考や感情を客観的に認識/理解する能力で、ご自身の思考の偏りや誤りに気付くことが可能になります。
心配のメカニズム:メタ認知療法では、ご自身の中に湧き上がってくる心配や不安をもたらす考えが頭の中で繰り返され、それを真実のように受け取ってしまうことが問題を引き起こすと考えます。そのため、そのように湧き上がってくる考えをうまく管理していくことを目指します。

<メタ認知療法の技法と効果>
思考と距離を置くことによる不安症状の軽減:ご自身の心配事から一定の距離を置くことを学びます。繰り返す心配や不安をもたらす考えに過剰に反応しないようにします。それによって不安を高めていってしまっている状況から退くことで、不安症状を軽減します。
信念の再評価と自己調整能力の向上:ご自身の思考の奥にある信念を見直し、より柔軟な考え方を身につけます。ご自身の思考を調整する能力を高め、ストレスや不安に対する耐性を強化します。

<適応症>
社交不安障害、全般性不安障害、パニック障害、抑うつなどに効果的とされています。

ブレインスポッティング(Brainspotting)
ブレインスポッティング(BSP)は、視覚的な焦点を利用して心の問題を解決する新しい心理療法で、特定の視点(ブレインスポット)に焦点を当てることで、脳の働きと感情の処理を促進する心理療法です。この手法は、2003年にアメリカで開発され、トラウマやストレスの治療に特に効果的とされています。

<ブレインスポッティングの基本概念>
視覚と感情(脳の働き)の関係: この療法は、「見る位置によって気持ちのありようが変わる」ということから、特定の視点が脳の中でトラウマや感情に関連していることを利用しています。

<ブレインスポッティングの実践方法>
ブレインスポットの特定: カウンセラーは、相談者がトラウマやストレスを感じる際に関連する視点(ブレインスポット)を特定します。
凝視と処理: 相談者は、特定されたブレインスポットを凝視しながら、その間に起こってくる感情や身体の反応や変化を観察します。この過程で、感情の解放やトラウマの処理が促進されていきますが、その際にカウンセラーと反応や変化を共有し、そこに起こってきている意味を強化していくことで、さらにトラウマやストレス/不安が軽減もしくは解消されると考えます。

<適応症>
PTSD、複雑性PTSD(長期反復的なトラウマ体験の後に見られる、感情などの調整困難を伴う心的外傷後ストレス障害)、不安症などに効果的とされています。

マインドフルネス瞑想法
マインドフルネスとは、「評価や判断を加えず、今自分が経験していることに意識を向け続けること」で、現在の瞬間に意識を集中させ、評価や判断を手放すことで、心の状態を整える技法です。このアプローチは、ストレスの軽減や心の健康の向上に寄与するとされています。

<マインドフルネス瞑想法の基本概念>
意図的な注意: 意図を持って現在の瞬間に注意を払う(呼吸に意識を集中させる)ことで、心の中の雑念を減らし、気づきの状態(アウェアネス)を高めます。

<マインドフルネスの効果>
ストレス軽減: マインドフルネスを行うことによって、ストレスや不安を軽減する効果があるとされています。心の状態を整えることで、より冷静に落ち着いて物事に対処できるようになります。
集中力の向上: 現在の瞬間に意識を集中させることで、心を落ち着き、集中力や注意力が向上します。

目次